0.5ha美術館横のシャトーローリエ

0.5ha美術館横のシャトーローリエ

まだトリコロールの色も意識していなかった二十歳の頃、師匠の薦めで初めてワインを買った。 細長いスリムな緑色のボトルに黄色いラベル、仏アルザスを代表するヒューゲル社リースリングのハーフボトル。不慣れな手つきでソムリエナイフを使ったが、キャップシールで指を切り、さらに力んでコルクも割った。デビュー戦のほろ苦い思い出。輝きのある緑がかったレモンイエローの液体から立ち上る、生の月桂樹の花と葉っぱのような香り。  ミュゼのテラスに根をはる2本のローリエ(月桂樹)の葉を料理用に摘む際、いつもあの頃の事を思い出す。...
幻のブラックパール

幻のブラックパール

ふとした時に見つけた春の足音。 我々日本人は他の季節にない喜びを春に感じる。 目覚める大地・小躍りする春告鳥(うぐいす)。 野の草の息吹をありがたく頂戴し、そのエネルギーを食す。 2019年平成最後の年明け、自然との対話を大切にする私に、幼馴染からある方を紹介された。 伊勢古仁屋(コビトヤ)工場長 吉田...
積み木とあられ

積み木とあられ

8月で5歳になった次男坊。少々危なっかしい所やひょうきんな所は、自分の幼少期と重なって見える。「脱走して家に帰らないように!」と、あえて遠くの保育園を選んだと母やんから聞かされた。 伊勢市大世古保育所虎組の集合写真の中に、今と変わらない顔の自分と、もう一人今と全く変わらないクラスメイトの清水。三代続く南勢糧穀の現社長である彼とは中学まで同じ学校に通い、優秀だった彼とそうでない自分はそれから全く疎遠であった。20年という熟成を経てフェイスブックなどで繋がり集まった同級生の中で彼とも再会した。...
魅惑の外道達② 魂のヒゲ

魅惑の外道達② 魂のヒゲ

ヒメジ、ベラ、ヘダイ、グレ、赤エイ…。外道という不名誉な呼ばれ方をする魚たち。光と影、どんな世界にでもある勝手な勝負付け。 赤い魚には高級魚が多い。明石の鯛や甘鯛、キンキにノドグロなど花形が名を連ねる。 「ヒメジ」をご存知だろうか?...
魅惑の外道達

魅惑の外道達

ヒメジ、ベラ、ヘダイ、グレ、赤エイなど、外道という不名誉な呼ばれ方をする魚達。 光と影、どんな世界にでもある勝手な勝負付け。理由は色々とあるが、まとまった水揚げがなかったり料理人が使いにくく(扱えず)、買い手が少なくお金になりにくいので漁師の扱いも荒く、状態の良くない物が出回る。多くの調理師が年中安定した味を求め今日も養殖の鯛や冷凍のブリを仕入れる。(これが悪い訳ではない。)...
ピエロのワイン(後編)

ピエロのワイン(後編)

翌年、三重県に帰った私は師匠から戦いのステージをいただいた。28歳でミュゼボンヴィヴァンのシェフに就任。その時師匠に「伊勢と全く違うカラーを打ち出せ!」という司令をうけ、山の恵と共にワインに力を入れた。数年後、さらなるレベルアップを図るべく、タルヤスの鬼頭さんにコラボイベントのお願いをし、今も毎回満席の人気イベント「マリアージュの会」をスタート。 そのイベントのクオリティにインポーターが食い付き、地方ではあり得ないような世界的なワイナリーを招いての美食の会を何度も開催。...