執筆者 ginjiro | 23年06月21日 | コラム
平成29年 立冬、ハシボソガラスの乾いた鳴き声が広大な橙色の敷地に響く。昭和8年から続くこの景色は、津市高野尾にある前川さんがご夫婦で営む果樹園。創業からこの丘を見守る樹齢86年の次郎柿は、祖父から繋げてきた誇り。当初は柿一色だった果実も、今では種類豊富な柑橘類やザクロに巨大なスイーツキウイ、私が樹ごと買わせていただく大きなサルナシなど、まるで色鮮クレパスのようにこだわりの品が揃う。...
執筆者 ginjiro | 23年06月21日 | コラム
「はい、そこまで。鉛筆を置いてください。」人生で初めて本気で勉強し、回りの期待を背負い挑んだ真夏のソムリエ試験。結果は実力不足で不合格。負けを引きずり不平不満に塗れた23歳の自分。 数カ月後、脱線したワイン街道行きポンコツ列車の車輪を正してくれたのは、一番期待していただいた師匠である河瀬シェフでした。「残念やけど、逆にお前はポンと受かった人らより倍勉強出来る。後方から一気に捲くったれ!」魂に再びガーネット色の炎が灯りました。...
執筆者 ginjiro | 23年06月21日 | コラム
燻した香りは本質を天使にも悪魔にもする…。 ワインに使われる樽を作る際、内側をバーナーで焼き木をしならせ組み立てていく。焼き加減や木の種類、樹齢などによってワインに溶け込む香りや味わいが違ってくる。 安い木の樽で仕込んだワインはフィネスに欠け、大味な甘苦味を呼ぶ。上質な樽はワインに深みと複雑味そして厚みを持たせ、私達を虜にする。 同じように料理人がよく使う燻製。私は軽く煙をまとわす程度にとどめる。どうしても支配的になりすべてが同じ香りになる事に少々抵抗を感じていた。...
執筆者 ginjiro | 23年06月21日 | コラム
賑やかな蝉時雨を豚舎で聞いた学生生活最後の夏。ワニやイルカのビーチボールではなく、愛くるしい彼らに股がり泥にまみれた日々。明野高校生産技術科の2、3年生が種付けから出産出荷まで愛情いっぱいに育てる豚との時間、命を学ぶ6ヶ月。生徒さんが生み出すブランド豚が「伊勢あかりのポーク」です。50頭ほどの中で生徒の村山さんが一匹の子豚に「ジャイコ」と名付けた。ストレスなくすくすく育つジャイコ達とは会話もできたという。愛情だけではなく、血統は県内では身体が大きくならないためほとんど見なくなった鹿児島の黒豚で有名なバークシャー種で、濃い肉の色とねっと...
執筆者 ginjiro | 23年06月21日 | コラム
潮干狩りとマリンスポーツで賑わう津の海。カラフルなヨットの帆と様々な国の人達が各々に楽しむ姿に、私の中のモノクロ写真を思い出す。 ヨーロッパ修行中、最後に訪れた地中海に浮かぶ島イビザ。ヒッピーの最終駅と言われるこの楽園のビーチで、トップレスの女性に目もくれず、黙々と浜の草を摘む現地の少年達。何かと尋ねると「貝と蒸し煮にする。」と教えてくれた。 「日本でも色々調べて自分の料理に取り入れよう。」と、新たな意識をいただきヨーロッパの修行を終えた。...