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空っぽのワインセラー

執筆者 | 6月 21, 2023 | コラム | コメント0件

今から約20年前、修行中の少ない収入で頑張って大きいワインセラーを買った。実家の男臭くて狭い部屋に空っぽのセラーが聳え立った。人生で初めて本気で勉強したソムリエ試験の頃からの相棒だ。

あれから県内の酒屋やワインショップはもちろんの事、旅先でも必ず酒屋巡りをしワインを買い集めた。初めてのヨーロッパ、スキポール空港の中のショップで買った古いクーレドセラン。パリのニコラで奮発したシャトーディケム。念願のサンテミリオンで立ち寄ったアンジェルスとクロフルテ。一番下の段には、ウチヤマ酒店の長田さんから預かっているグランヴァン。

空っぽだった僕とワインセラーには、人生のワイン街道を歩いてきた証と物語がぎっしりと詰まっている。

そして、セラーに守られ数年後、ワインだけの特権である瓶内熱成を経て、ワインは喜びや感動を生む。

令和元年10月、ミュゼのスーシェフ 22歳の大揮が大きなワインセラーを買った。本気の証、今は空っぽのワインセラーと共に、人生のワイン街道を歩み出した。