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ピエロのワイン(前編)

執筆者 | 6月 21, 2023 | コラム | コメント0件

黒いギャルソン服に黒いタブリエ。

いつもより長い時間鏡を見る自分の胸元には金色の葡萄バッジがあった。

本気の戦いで負けた23歳の夏。

あれから1年、かなり精度を上げ掴んだ念願のソムリエ資格。取得後の景色は変わり、ワイン業界の付き合いが増える中で数人から言われたある人物の話。

「エクシブのシェフソムリエ知っとる?」。同世代のライジングスターだと皆が口を揃える。数年後、友人の祝いでエクシブに行った時、彼の姿はなかった。

28歳の時、京都修行中にシニアソムリエを取得。自身の祝にヴィンテージワインをと、約5年ぶりに白子のタルヤスさんを訪ねた。電話でのたまの注文で話する鬼頭さんと初めて対面。盛り上がる話の中、何気に何枚も飾られた壁の賞状を見た時、何かが過剰に反応し、霞がかった私の中のテイスティンググラスに清澄度が甦る。自分が耳にした噂話と、今までのキャリアを聞くと、「そんな天才いらしたんですねー…。僕です。」と、ピエロのように笑った。

私のワイン人生は鬼頭さんとの出会いで大きく動いた。